ルパン音頭 映画「ルパン三世」劇中歌

アニメ音頭・盆踊りの曲/歌:三波 春夫

『ルパン音頭』は、アニメ「ルパン三世」劇場版として1978年12月に公開された映画「ルパンVS複製人間」の劇中歌(主題歌)。「音頭」のタイトル通り、盆踊りの曲としても使えそうなお祭りムードただよう陽気な楽曲。

「俺はルパンだぞ~♪」と高らかに伸びのある声で歌い上げるのは、紫綬褒章を受章した人気演歌歌手・三波 春夫(みなみ はるお/1923-2001)。

ルパン三世主題歌ベスト

ルパン三世と三波 春夫というと、この『ルパン音頭』だけが注目されることが多いが、実はもう一曲、銭形警部のテーマソング『銭形マーチ』も三波春夫が歌っている。

作詞はルパン原作者のモンキーパンチ、補作詞:中山大三郎。作曲はルパンシリーズの主題歌やサントラを手掛ける大野雄二。

ルパン作品の世界観と合わない? 監督降板の騒動にも発展

和のテイストが強い『ルパン音頭』は、盆踊り会場などで映画作品とは独立して用いられる分には何も問題はない。三波 春夫の高い歌唱力とあいまって楽曲としての完成度は高い。

ただ、西洋の世界観がふんだんに盛り込まれたルパン作品の中で用いられるとなると、若干話は変わってくる。

確かに、流れるタイミングとしてはそれほど悪くはない。同曲は映画「ルパンVS複製人間」の終盤で、ルパンと銭形警部が二人三脚で逃げ出すコミカルな場面で流れるのだが、それまでの緊迫したクライマックスシーンが一通り終わり、映画の来場者が解放感でホッと息を抜ける場面なので、『ルパン音頭』のような底抜けに明るい曲もアリと言えばアリだ。

また、映画「ルパンVS複製人間」はルパンシリーズが初めて映画化された記念すべき第一弾の作品で、製作会社としても人気演歌歌手を起用して目玉となる目出度い演出を盛り込みたかった、または娯楽アニメとしての作品があまりにシリアスな印象のままストーリーが閉じるのを嫌った、などの理由があったとすれば、それはそれで理解できる。

クリスマスシーズンの映画に『ルパン音頭』?

しかし、公開当時はクリスマスシーズン真っ只中の12月中旬。季節的な感覚からして夏のイメージが強い「音頭」のメロディが大きく用いられることについては、違和感がないと言ったら嘘になるだろう。

もし映画のストーリー上で、なにか伏線になるような和のエピソードが前半部分であったのであれば、挿入歌による伏線回収として一定の存在意義が認められそうだが、本作品上ではそれらしきものも見当たらない。

なぜ『ルパン音頭』がねじ込まれたのか?調べてみると「大塚康生インタビュー アニメーション縦横無尽」(実業之日本社)によれば、映画を製作した東京ムービー新社の社長・藤岡豊が独断で採用した演出だったようだ。

これに対して監督の吉川惣司は、「『ルパン音頭』はルパンの世界観にそぐわない」と大いに反発。ついには監督を降板する直前までの騒動に発展したという。

言うまでもなく、主題歌やエンディング曲が作品全体のイメージに与える影響は本当に大きい。全く納得のいかなかった監督も、最後は大人の対応で作品完成までに至ったが、心の中に残ったわだかまりは最後まで消えなかっただろう。

次回作「カリオストロの城」も危なかった…?

ちなみに、翌年に公開された劇場版ルパン三世の2作目は、宮崎駿監督による名作「ルパン三世 カリオストロの城」。仮にこの作品で藤岡社長が『ルパン音頭』を使う話が出ていたら、おそらく宮崎駿監督は何のためらいもなく作品を降板したのではないかと想像される。

もし「カリオストロの城」最後の場面で、銭形警部のあの名台詞の直後に『ルパン音頭』が流されていたとしたら…。まったくありえない話だが、想像するとぞっとするような、あまり笑えない残念な気分になってしまいそうだ。